中国海軍は、保有する空母「遼寧」が南シナ海で初めて発着艦訓練を行ったと発表し、「米国の空母が独占してきた南シナ海の歴史は終わりを告げた」と述べました。
アメリカ海軍を牽制する目的で、南シナ海での訓練を発表
アメリカ海軍以外にも空母を保有できることは政治の上でも大きな存在ですが、現況ではただ持っているという事実に過ぎないでしょう。空母の運用術ではアメリカに確実に軍配が上がります。
移動する海上基地という点が空母戦力の大きな利点ですが、少なくとも現況の1隻だけの所有では比較に値しないことです。数々の要素を加味しての戦力なのです。
中国当局もこの点は十分承知しているはずですが遅れをとるまいという行動でしょう。
南シナ海の海底資源開発を睨んで戦力を増強
現在、中国海軍は南シナ海の海底資源開発を目的に戦力を増強させています。その象徴的な存在が空母「遼寧」です。
中国は国内生産の空母を建造中ですが、海上戦力の増強の手っ取り早い方法としてロシア海軍の未完成空母を購入し、改造して戦列に加える手段を選択しました。
アメリカの空母とは違って戦力的には遥かに劣りますが、「空母保有国=一流の海軍国」という地位を得るための現実的なやり方なのでしょう。ただ、そのことによって周辺諸国の反感を買っていることも事実です。拡張路線は当面の中国の方針でしょう。
「遼寧」の力を見せつけたい中国の思惑
今回の南シナ海での訓練は、改造した遼寧を張り子の虎で終わらせたくない中国の示威行動です。自国で開発した戦闘攻撃機である殲15を実際に空母から発着艦させることで大国の威信を見せつけ、自国に有利な展開を押し進める姿勢が明白です。
しかし、広大な海を一国だけの利権に占められるということはあり得ません。周辺諸国の海軍力は脆弱ですが、世界最強の海軍力を誇るアメリカが一国独占を黙認する訳はありません。
中国はアメリカにとっては脅威となり得ない?
政権交代を含んだ中国の対米政策の一環ではあるでしょうが、台湾問題をも含めて複雑に推移すると思われます。つまりは大国同士の覇権争いが目に見える形で展開していると思います。
現時点でも無視できない存在ではありますが、脅威とまで飛躍して考えるのは日本のマスコミくらいでしょう。この程度では現実の戦力としてアメリカ海軍に拮抗できるレベルではないと私は考えています。
つまりは支えられる力の差ということです。強大な軍事力は同様に強大な経済力及び技術力の裏付けがなければ成しえないことです。中国はまだまだアメリカに対して勝っているとは言えないでしょう。
中国海軍の航空母艦は有効な戦力となり得るのか!?
中国が考えているシナリオと現実の推移はかなり異なると思われます。
実は空母の運用は単に母艦と艦載機のセットで成り立つという単純なものではなく、母艦の帰港時に艦載機を収容させる航空基地の存在、補充の要員と教育、消耗品の補充、機材の補修点検と、様々な側面があります。
実は海洋戦力の保持には同型艦が複数運用されなければならないという鉄則があるのですが、単艦、しかも長期間放置されていた未完成艦を整備して使用するという方法はかなりの無理があると思われます。
予備の戦力が無いというのは用兵側としては避けたいリスクですから、少なくとも僚艦が戦力として登場するまでは、シンボル的役割に徹するだけだと思われます。
ライター:anb 編集:moz